ビタミンと言えばビタミンCを思い浮かべませんか?それくらいお馴染みであり、なおかつ重要なビタミンであるビタミンCは生理学者のセント・ジェルジ・アルベルト博士によって発見されました。その発見により博士がノーベル賞を受賞したのは1937年のことです。ビタミンCが発見されてからまだ80年ちょっとしか経っていないんですね。
アルベルト博士はハンガリー出身です。第2次世界大戦中にハンガリーの首相から連合国(アメリカ、イギリス、ソ連など)と和平交渉をする密命を受けていたのですが、その計画がドイツに知られてしまい、ヒトラーから逮捕令状が出されたそうです。そのため、戦争が終わるまで逃亡生活を続け、最終的にはアメリカへ亡命したそうです。なかなか波乱万丈な人生ですね。
アルベルト博士はビタミンCの発見のみならず、ビタミンPが毛細血管の出血を防ぐのに効果的であることも発見しました。ビタミンPはビタミンCと共にはたらき、毛細血管を細菌やウイルスから守る働きがあります。また、ビタミンCの消耗を防いで、強くしなやかな血管を保つ働きもあります。
ちなみにビタミンPは実際にはビタミンではなく、ビタミンみたいな働きをする物質(ビタミン様物質)らしいです。ビタミンPはヘスペリジン、ルチン、ナリンジンなどで構成されています。
その中の1つ、「ヘスペリジン」は柑橘類に多く含まれています。ヘスペリジンは血流循環を良くする働きがあるのですが、それを実証する実験がありましたので、ご紹介します。
冷え症の方を対象にした実験です。室温約22度の部屋に入ってもらい、指先の体温を測りました。入室前に1つのグループにはただのオレンジ色のジュースを、他の2グループにはヘスペリジンが入った飲み物を飲んでもらいました。
○の線がオレンジ色のジュースを飲んだグループを表しています。入室後15分ほど経過するあたりから指先の温度低下が生じ、70分後には当初より5度程度下がっています。
一方、●と▲はヘスペリジンが入った飲み物(●が濃度低め、▲が濃度高め)を飲んだグループを表しています。どちらのグループもオレンジ色のジュースのグループほど指先の温度は低下していません。
なぜこのような違いが出たかと言うと、血流が関係しているようです。図はそれぞれのグループの血流の変化を表しています。
人体は寒さにさらせれると、体の中心部分の熱を奪われないように、末梢への血流を減らします。そのため、手足などの体の先端が冷たくなります。
この実験でもオレンジ色のジュースを飲んだグループは末梢への血流が低下し、手の温度が下がったと考えられます。図でも○は血流が下がっていっているのがわかります。
ヘスペリジンが入った飲み物を飲んだグループ(●と▲)はヘスペリジンの「血流を促す」働きのおかげで、血流が低下せず、手先の温度が保たれたと考えれます。
ヘスペリジンは柑橘類に豊富に含まれていますが、果肉部分よりも皮やすじ、袋に多いそうです。特に白いすじ部分に多いそうなので、手足の冷えが辛い方はみかんのすじを取らないで食べることがオススメです。
また、皮は乾燥させてお風呂に入れれば、冷え性対策完璧ですね!
文:真木