筋膜と柔軟性

今日は「ブログで筋膜について書いてほしい」というリクエストを頂きましたので、筋膜ネタでいきたいと思います~。特に「筋膜がほぐれることで、柔軟性は上がるのか」という点について考えてみたいと思います。リクエストくださったO様ありがとうございますした!

 

前置きとして・・・筋膜というものが研究されるようになってまだ20数年しか経っておらず、筋膜についてはまだまだ「わかっていない」というのが現状です。

 

英語では筋膜はfascia(ファーシャ)で、これは単数形です。ファーシャではなく複数形でfasciae(ファシエ)と呼ぶべきなのか、はたまたfascail system(ファーシャル・システム、筋膜組織)と呼ぶべきなのかすら定まっていません。そもそも「組織」なのか「器官」なのか、どちらでもないのか、「なんなのかさっぱり分からん」というレベルなのです。なので、今回のブログも巷に転がる筋膜情報も鵜呑みにしないことが大切かと思います。

 

筋膜と言えば、「筋膜リリース」や「筋膜はがし」を思い浮かべる方が多いかと思います。ローラーやボールでゴロゴログリグリするやつです。筋肉の柔軟性を引き出し、関節の可動域が拡大すると言われています。早い話が「体が柔らかくなる」ということですが、どういう原理でそれが起こるのかと言うと、

 

「筋膜の委縮や癒着を引きはがしたり、引っ張ったり、こすったりすることで、筋膜が正常な状態に戻る」ことで生じるのだそうです。

 

筋膜が硬くなっていたり、くっ付いているから体が硬くなる。だからそれをほぐし、くっついている部分をはがせば体は柔らかくなる・・・なるほど!という感じがしますが、実はこの仮説をサポートする論文は今のところただの1つもないそうです😭逆に、ローラー等でコロコログリグリしても筋膜には何の影響も及ぼさないと結論付けている論文はけっこうあるのです😭

 

「騙された!ローラーなんて捨ててやる!」と思った方、落ち着いて下さい。後ほど書きますが全くの無意味ではありませんので。その前に「筋膜とはどんなものなのか」を今一度知る必要があると思います。

 

画像は作り物ではなく、本物の筋膜です。2枚目は乾燥した状態ですが、いずれも付着していた脂肪を完全に取り除いた状態のものです。乾燥したものと液体に浸かっているものは、筋膜が網目状になっているのがわかりやすいですね。

 

画像の方は何をしていると思いますか?実は、筋膜で何キロまで持ち上げれるかを実験しているのです。左は脂肪を取り除いた状態の筋膜、右は脂肪が付着したままの筋膜です。

 

左側は高齢男性の背中上部の筋膜を使っています。14.5キロの重りを持ち上げても筋膜は破れていません。右は高齢男性の胸の筋膜を使っています。こちらは22キロの重りを持ち上げました。あるYouTube動画からの抜粋なのですが、研究者の男性も思わず「なんて強いんだ!」と声を上げていました。

 

 

こちらは上記の22キロの重りを持ち上げてもビクともしなかった筋膜から脂肪を取り除いたもの(左)とライトを当てたもの(右)です。薄さがわかります。

 

この薄さが「筋膜リリース」の勘違いの始まりなのではないかな~と真木は思います。「薄い膜ごとき、少しばかりゴロゴロすればほぐれて柔らかくなるに違いない」と。確かに薄いですが、上記の実験でもわかるように筋膜は強いのです。「鉄のように強い」と表現していた人もいました。

 

鉄にテニスボールを当ててゴロゴロしたら柔らかくなると思いますか?なるわけありませんよね。そう考えると、筋膜がローラー等でほぐれるとはとても思えません。

 

圧で筋膜が緩むのなら、例えば座っている時、お尻にはずっと圧がかかっているわけですが、お尻の筋膜がそれで緩んだり、整ったりするのかと言えば、そんなわけはありません。むしろ長時間座っていれば筋肉も筋膜も柔軟性が落ちるはずです。

 

また、「正常」な筋膜への影響はどうなのか?という疑問も生じます。「異常」をきたしている筋膜にローラー等を当てて「正常」な状態に戻すことができるのなら、それほどの威力を持ったローラーを「正常」な筋膜に当てた場合には、損傷を起こしたりしないのか?と思うわけです。ローラーでゴロゴロする時には、必ずしも「異常」がある部位に確実に当てれるわけではありません。そもそも「異常」な状態の筋膜というのが、どんな状態なのかもわかりません。圧を加えることで筋膜がはがれたり、正常な状態に戻るという理論は無理があるように感じます。あくまで真木個人の考えですが。

 

筋膜はほぐすことができるのか、できるとしたらどんな方法があるのか、筋膜に関する研究が進むことを祈るばかりです。

 

と、なんだか筋膜リリースの悪口みたくなってしまいましたが、筋膜リリースそのものは否定しません。筋膜、そしてそれに包まれている筋肉に圧を加えることで、筋膜や筋肉が「リラックスする」ということは十分に考えられると思います。

 

筋膜リリースによって痛みが楽になったり、わずかな間でも柔軟性が上がるのは、「筋膜が正常な状態に戻った」のではなく、筋膜や筋肉がリラックスしたことによるのではないかと思います。

 

真木の推測がもし正しいのだとしたら、ローラーやボールでゴロゴロする時に大切なのは、「体の力を抜く」だと思います。これはストレッチの時も同様です。痛いとどうしても体がこわばって余計な力が入ってしまいますが、それはリラックスとは真逆の状態です。ローラーなどを当てる時には、強い痛みを感じるほどの圧ではなく、体の力を抜ける程度の程よい圧にすることが重要ではないかと思います。

 

ところで「筋膜」と聞くと、筋肉だけを包んでいるような印象を受けますが、実はそうではなく、骨や内臓、血管から神経まで体のあらゆる部位を包み込んでいます。

 

英語のfasciaを「筋膜」としたのは誤訳ではないかと思っています。英語では筋肉を包んでいるものをmyofascia(マイオファーシャ、myoには筋という意味があります)と呼び、fasciaの中でも筋肉を包んでいるものをmyofasciaと呼んでいるようです。

 

日本語では全部まとめて筋膜と呼んでいるような節があるので、明確に区別した方が良いのではないかな~と個人的には思います。

 

ということで、まだまだよく分からない筋膜ですが、わかっていることももちろんあります。1つは筋膜はつながっているということです。イラストの水色で表されているように、筋膜は体を縦横無尽に走っており、その走り方には様々な形があるということです。2つ目に筋膜は乾いた状態だと硬くなるということです。前半の方で乾いた状態の筋膜の写真がありましたが、どう見ても柔軟性があるようには見えませんよね。

 

 

縦横無尽に走る筋膜を乾かせないためにできることがあります。それが全身に血流を巡らせることです。そのためにできる確実な方法が1つあります。それが・・・

 

動く

 

です。Motion is lotion.(モーション・イズ・ローション)という言葉があります。モーションは動くことです。ローションは化粧水などを意味することもありますが、要は潤いを与えるものです。

 

体を動かすことで筋肉はもちろん、筋膜にも潤いを与えることができ、柔軟性に富む筋膜となるのです。

 

体の動かし方にもポイントがあります。ただ動くだけでは、色々な方向に走っている筋膜をまんべんなく動かすことはできません。ただ動くのではなく、「ありとあらゆる方向へ動く」ということが重要になります。思いつく全ての動きを行ってみると良いかもしれません。傍目には怪しい人と映ると思いますので、お家で1人の時にやると良いかもしれません・・・😄

 

文:真木

 

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コメント: 2
  • #1

    オイダ (火曜日, 12 7月 2022 15:34)

    早速ブログに取り上げてくださり、ありがとうございます
    日々の不調を表現する言葉を持たなかった私にとつてまさに!「ほんやくコンニャク」を手に入れた心持ちです。
    筋力不足だけでは説明つかないなぁと、悶々としていた時ソフトSMの動きの中で上体をひねっているはずなのに脚までひねりが伝わるのはなぜ?と俄然筋膜に興味がわきました。「ゴワゴワして突っ張る」感はまさに乾燥ヘチマのごとく。動作始めの違和感もクレ556切れのドアのよう!
    具体的なイメージも掴めそうで勇気が湧いて来ました。
    これからもお世話になります。そしてこっそり、怪しい踊り始めます。

  • #2

    シャキット真木 (火曜日, 12 7月 2022 16:17)

    筋膜にもクレ556を注入できたらいいんですがね~。でもイメージが掴めそうということで良かったです!はい、怪しい踊り、ぜひ始めてみてください(笑)全身に血液が巡って、筋膜が潤って柔軟性が増していくことをイメージしながら踊ってみて下さい!